漫画

  • majoccoid『待ち合わせはさそり座のどこかで』と『ここは天国じゃないけど』を読みました。

    両方6月に読んだ漫画ですが、感想を書いてそのまま投稿できていなかった。

    待ち合わせはさそり座のどこかで

    あらすじ

    幼い頃に暮らしていた街に戻ってきた高校生・燦吏は、転校先で当時片想いをしていた少年・玲と偶然同じクラスになる。玲も燦吏のことを覚えていて、運命のようなものを感じた燦吏は再び淡い恋心を抱き始める。
    しかし放課後に男とホテルに入って行く玲を目撃した燦吏は、大きなショックを受け、玲に問いかける。セフレだとあっけらかんとこたえる玲だが、次に続いた言葉は「人を好きになるって全然わからない」で…?(引用:上記書籍ページより)

    Aロマのキャラが登場するBL漫画だと知って読んでみたらすごく良かったです。早くも2025年ベストBLランキングの上位にランクインしました。

    わたしはAro/Ace(アロマンティック/アセクシュアル)です。
    Aスペクトラム関連のフィクション作品でも共感メーターに度合いがあるのですが、『待ち合わせはさそり座のどこかで』は身に覚えがあるシーンの連続でびっくりしました。

    下記は、Aロマである玲の心情や言葉の引用です。

    「…なんでみんな気になる人・・・・・がいる状態が普通デフォみたいに話してるんだろ」(2話)

    「俺を不完全なものみたいに扱わないで」(2話)

    「「いつか分かるよ」…とかわかって初めて一人前みたいに言うけどさ わかんねえよ みんな違う星の生き物みたい」(3話)

    「俺の気持ち勝手に作って 勝手に離れて行こうとしないで」(3話)

    この感覚が痛いほどよく分かる。
    中学生の頃「〇〇は好きな人いるの?」と聞かれたときに「好きな人って何?友達とは違うの?」と答えて相手を困らせたことがあります。
    そしてAロマは「冷たい人」という偏見をぶつけられることがよくあるけど、全然そんなことないです。それがちゃんと漫画で描かれていたのが嬉しいです本当に。

    あとこれは漫画表現の話なのですが、
    「自分一人が取り残されたような感覚」を「宇宙と宇宙服を着て浮遊する玲」で描写するmajoccoid先生が流石だなと思いました。解釈が間違っていたらすみません…。

    玲に恋をする燦吏はゲイで、玲に対して「好き」と伝えて良いのか右往左往するシーンも印象的でした。燦吏は慎重で、恋愛の暴力的な側面と真剣に向き合いつつ、「「変わってしまった」なんて雑な理解で俺は何をわかった気でいたんだ」と気づいて一歩踏み出す勇気がすばらしいと思いました。

    燦吏が加入してるバンドのメンバーも全員良い人だし、この人たちが演奏する音楽も聴いてみたいです…。全てブッ刺さりすぎて書き切れない。

    この二人の番外編の物語(同人誌)があるらしいので、読みたくてうずうずしています。


    ここは天国じゃないけど

    あらすじ

    ガールズバーで働く女がごみ捨て場に落っこちていた天使と出逢う話。
    ※同性愛差別的な発言をする人物の描写が含まれますので購読の際ご注意下さい。この作品にあらゆる差別を助長する意図はありません。また、この作品は実在する宗教とは一切関係ありません。(引用:書籍ページより)

    全38ページの短編ですが、すばらしいGL漫画でした。
    物語は職場のガールズバーで自分の噂話(同性愛差別を含む)を偶然聞いてしまった遥の心の声からスタートします。

    「同僚と付き合ってどぎついフラレ方して飛ばれたって話と「女同士」ってことに何か関係あんのかよ クソがよ」(P8)

    そうやって不貞腐れて夜道を歩いているときにごみ捨て場に落ちていた天使と出会うのです。
    最初は冗談だと思ったのに、本当に“天国”からやってきた天使だと知る遥。寄る辺のない天使との生活が始まり、話して、次第に二人の過去が明らかになります。
    その過去はタイトル通り「天国じゃない」し、現在の二人が存在する世界も同様なのだけれど、それでも一緒にこの場所で生きていくと決めた二人。
    マイノリティは儚くなんてない。存在を悲劇で終わらせないという覚悟を感じる内容でした。
    (短編なので全部言うと本当にネタバレになってしまうので伏せます。)

    でもこれだけは言わせてください…。個人的に嬉しかった発見は、遥の部屋の本棚に「ダロウェイ夫人」「波」「自分ひとりの部屋」「N/A」が置いてあったことです。

    今ならKindle Unlimitedにも入ってますので、ぜひ。

  • 琥狗ハヤテの『BLACK BLOOD』を読みました。

    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784829686737

    戦い疲れたサイボーグの兵士・イーサンは、
    安寧を求めた惑星で植物学者のミハイルと出会う。
    笑顔で挨拶する彼の手はやわらかくて、壊してしまいそうなほどか弱く思えた。
    ミハイルといると、そわそわと落ち着かない。
    触れたい、愛でたい──それは、ただただ「人」らしい感情だった。
    自分の中にそんな「心」が残っていたのかと困惑するイーサンにミハイルは……。

    戦い疲れた軍役サイボーグのイーサン×植物学者のミハイルのBLです。

    イーサンが“生体(なまみ)”だった頃の外見は出てこない。

    二人の会話の中で、イーサンは「サイボーグである自分の肉体(ボディ)はほとんどが人工物で、精神構造を持つ脳だけが生身 人として生きているのはそこだけ」だと言う。だけど、ミハイルは「君のすべてを君だと思っているよ イーサン」「姿を変えてゆくのはおかしなことじゃない」と答える。この言葉が全ての答えじゃないですか?

    イーサンの心がどこにあるのか、自分と異なる肉体を持つミハイルとその心に触れ合うことで気付いていくのがいいなと思いました(※ここらへんはシェイプ・オブ・ウォーターみがありました)。

    あと、イーサンとミハイルが二人で空を見上げながら、あなたには(空が)どう見えるかという話になったとき、イーサンが「俺はサイボーグだ 高精度スコープがついてるが 生の眼球はねぇんだ お前と同じような見え方はしてねぇと思うぜ」と答えると、ミハイルは「え?僕は僕で君は君だ 僕と同じような見え方をする必要は全くないよ」と返すシーンが大好き。尊重を丁寧に描く作品はなんぼあってもいい。


    取り外し式ペニスのカタログ描写には笑ってしまった。コミカルでありつつ、核心をつくような物語でした。

    2025.4.26

  • 柴田文先生の『スキップしたいな』を読みました。

    激務による疲労のため、駅のホームで倒れてしまった医療機器メーカーの営業マン・永田聖。介抱してくれた駅員にお礼がしたい聖は、後日その駅員・来栖修平に再会する。お礼を伝えるも「気にしないでください」と遠慮する修平に、聖は強引に名刺を渡してごはんの約束を取り付けた。約束の日、開口一番に体調を気遣ってくれる修平の優しさに、心があたたまるのを感じる聖。同い年で気さくな修平との出会いは、仕事で私生活や交友関係をないがしろにしていた聖に変化をもたらし…。(引用:裏表紙のあらすじより)

    柴田先生の『スキップしたいな』はシーモアで単話が発売されたときから追いかけていたのですが、その頃わたしは転職後で激務が続き、気が付けば寝る以外は仕事のことばかり考えていました。行動範囲は家と職場、ときどきスーパー。自分は何に心を動かされて、どんなことが好きなのか、言葉にする時間がない。そんな状況が、この作品に登場する永田くんとリンクしているような気がして、読むたびにいつも励まされていました。(作品の舞台が京都なので、その点も身近に感じたのかもしれない)

    好きなシーンはたくさんありますが、私は永田くんと来栖くんが初めて一緒にご飯を食べた日の会話が印象に残っています。

    「僕今日めっちゃ楽しかった ありがとう」

    「あっ ……俺も!楽しかった ありがとう! 」

    「うん ほなおやすみ」

    何気ない会話かもしれないけれど、今日楽しかったと伝えることって意外と難しい。楽しむ気持ちを忘れていたら、もっと難しい。でもそういう壁をひょいっと軽く飛び越えてくる来栖くんがいてくれたから、永田くんは楽しさを思い出せたのかもしれない。こんな場所に金木犀が咲いているとか、電車内で永田くんが勤務する会社の広告を見つけるとか、出会った人の影響で物や景色の見方・捉え方が変わっていく様子が丁寧に描かれているのもいいなと思った。

    後半では永田くんの知りたい気持ち/来栖くんの知られたくない気持ち、そして永田くんが無意識に来栖くんを傷つけてしまったことを反省するシーンがある。時間がかかったとしても、それでも対話をやめず、ちゃんと謝って好きという想いを伝えるところもすごく良かった。

    柴田先生の作品はケアの描写がたくさん出てくる。それがすごくあたたかくて優しい。あと本当に絵が上手い。登場人物の表情が豊かだし、ご飯も美味しそうだし、ふきだしや背景の柄もかわいい。読んでいるとにんまり笑顔になります。基本的に漫画は電子で買うことが多いんだけど、紙でもゲットできて嬉しい。読み終わった後は思わずスキップしたくなる、そんな作品だった。