https://gunzou.kodansha.co.jp/indexes/2023
主人公には、優しい姉夫婦と明るい姪っ子、いつか結婚するであろう恋人がいる。絵に描いたような“普遍的で幸せな日常”。
しかしその一方で、主人公を取り囲む「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」は自己の生活や境界線にジリジリと侵食してくる。
好意を持った相手に「困ったときはいつでもそばにいてあげたい」「守りたい」「世界を敵に回しても君の味方でいる」と言われると冷ややかな気持ちになるとか、映画を一緒に観ると我慢できる涙まで流してしまうとか(そして「お互いの涙を見て拭って笑う」までがセットになっている)そういう「ロマンティック」とされるものに対する不信感や不気味さみたいなものをリアルに描いていたのがよかった。
「わたしは、欲しい言葉を差し出せる人ではなくて、欲しくない言葉を突き付けてこない人と、暮らしていきたいのだ」(21頁)
主人公は↑こう思っているのだけれど、後半からは「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」のオンパレードです。本当の恋を見つけることは素晴らしい!それって愛してるってことじゃん!周りを見ればロマンティックだらけ。そんな、どこにも逃げられない状態を、サイレンに喩えたのは上手いなと思った。